「母のたんすに、着物と帯が詰まったまま。京都に住んでるんやし、近所に持って行けば買うてくれるやろか」。実家を片づけ始めた人から出てくる、京都らしい相談です。
ところが京都府で金額の記録が残っているのは、着物より帯のほうが多数です。公開されている六件のうち四件が帯で、和装小物も一件。着物そのものは一件だけでした。
金額は、名古屋帯で八万三千円、刺繍の帯で四万三千円、帯締め一本で二万三千円。いっぽう黒留袖は落札の平均が三千円に届きません。格の高い着物ほど高いとは限りません。
そして京都で目立つのが、持ち込み先を探している人の多さ。ひと月に三百三十件が「持ち込み」という語をつけて調べています。呉服の店は多くても、買い取る店が同じだけあるわけではありません。たとう紙を抱えて四条まで出るのが唯一の道か。家で広げてもらう選び方も、いちど天秤にかけてみてください。
たんすの中身はいくらになるのか。京都の着物はどこで作られているのか。買ったときの三十万円と、いま示される金額はなぜ違うのか。洗ってから出すべきなのか。この四つに順番で答えます。読み終えるころには、引き出しを開ける日が決まっているでしょう。
この記事を読んでわかること
- 京都府の記録は六件中四件が帯で、着物より数字が出ていること
- 名古屋帯八万三千円、刺繍の帯四万三千円という府内の実際の金額
- 格がいちばん高い黒留袖に、数字がついてこない理由
- 京友禅の参考価格が十五万円まで、袋帯が二十万円までであること
- 丹後ちりめんが三百年前に西陣の技術から始まったこと
- 京友禅は分業が前提で、全部を一人で仕上げる作家が例外だということ
- 三十万円で誂えた留袖と帯の、次の持ち主が払う金額
- しみ抜きに出すと、戻ってくる金額を超えてしまうこと
- 証紙と落款にはさみを入れてはいけない理由
- 喪服とウールの着物は宅配で送れないという制約
- 京丹後市や宮津市まで訪問の対象に入っていること
- 書面が届いてから八日は、たんすに戻していいこと
- 売りつける訪問と、買い取る訪問はまったく別の話だということ
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京都で数字が出ているのは、着物より帯だった
京都府で公開されている買取の記録は、六件のうち四件が帯です。着物の産地であり染めの街でもあるのに、金額が並んでいるのは帯のほう。
この偏りには理由があります。まずは記録の中身と、京都だけに出ている調べ方の特徴から順に見ていきます。
府内の記録は六件のうち四件が帯
京都市の名古屋帯が八万三千円、宇治市の刺繍の帯が四万三千円、京丹後市の袋帯が二万八千円。これに和装小物の帯締めが二万三千円で続きます。
着物そのものの記録は、京都市で買い取られた辻が花の訪問着が一件だけ。金額は公開されていません。宇治市の帯にも金額の記載がなく、数字が出ているのは四件でした。
| 市 | 品名 | 金額 |
|---|---|---|
| 京都市 | 浦野理一 縦節紬 花唐草文 名古屋帯 | 83,000円 |
| 宇治市 | 仙頭刺繍 帯 | 43,000円 |
| 京丹後市 | 誉田屋 誉文彫金 リバーシブル全通袋帯 | 28,000円 |
| 京都市 | 有職組紐 道明 帯締め(和装小物) | 23,000円 |
| 京都市 | 久保田一竹 辻が花 訪問着 | 金額の記載なし |
| 宇治市 | 羽田登喜男 名古屋帯 | 金額の記載なし |
六件すべてが出張買取という点も見逃せません。京都市・宇治市・京丹後市と、府の南から北まで散っています。市内に店があっても、来てもらう形が選ばれているわけです。
帯は結ぶ人が減っても、買い手のほうが残った
帯は着物と違って、体格に合わせて仕立て直す必要がありません。丈と幅がほぼ決まっているので、誰の帯でもそのまま締められます。
着物のほうは、身丈と裄の寸法が合わなければ直しの費用がかかります。買う側からすると、そこが一段のハードル。同じ状態なら、寸法の壁がない帯のほうが買い手を見つけやすくなります。
市場そのものの大きさも見ておきましょう。百二十日のあいだに名古屋帯が二万九千三百二件、袋帯が五万六千九百三十六件も動いています。
持ち込みで調べる人が三百三十件。京都だけの偏り
「着物 買取 持ち込み 店舗 京都」だけで二百十件。持ち込みという語を含む調べ方を合わせると三百三十件です。着物で調べる人が四百八十件なので、その七割近くが運ぶ前提です。
呉服の街だから店はあるはず、という前提でしょう。ただ実際には、着物を売る店と買い取る店は別の商売です。ここがずれていると、たとう紙を抱えたまま戻る羽目になります。
だからこの記事は、相場の先頭を帯に置きました。そして持ち込みの話にも一つの見出しを割いています。数字と運び方、両方が決まれば迷いません。
帯から紬まで。京都のたんすを種類で分ける買取相場
参考買取価格の上限を並べると、袋帯が二十万円、訪問着が三十万円、京友禅が十五万円、大島紬が三十万円です。いっぽう黒留袖は七万円で、落札の平均は三千円に届きません。
広げた一枚が何なのか分からない、という段階から始めても構いません。袖が長ければ振袖。全体が黒く裾だけに柄があれば黒留袖で、地色が付いていれば色留袖です。縫い目をまたいで柄がつながれば訪問着、縫い目で切れていれば付け下げ。柄がまったく無ければ色無地、同じ柄が全体に繰り返されていれば小紋。糸に節が見えて手ざわりがざらりとしていれば紬です。
ここからは素材の確認と帯を先頭に、十一の区分で目安を並べます。品目ごとの深い話は着物の買取相場をまとめた記事にゆずります。
絹の一枚と化繊の一枚は、別の相場をたどる
種類を調べる前に、まず素材を確かめてください。絹かどうかで金額の桁がひとつ変わります。買取会社も、査定でまず見るのは素材だと公表しています。
落札の実勢で比べると、ポリエステルの着物は百二十日で二千九百三十六件・平均三千三百六十九円。洗える着物も平均三千四百十四円どまりです。いっぽう正絹の色無地は平均四千百七十七円で、最高は十四万三千円まで伸びます。
| 素材 | 落札の実勢(120日) | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 正絹の色無地 | 8,828件・平均4,177円・最高143,000円 | 光沢に深みがあり、手にしっとり吸いつく |
| ポリエステルの着物 | 2,936件・平均3,369円・最高47,800円 | 表面がつるりと滑り、静電気が起きやすい |
| 洗える着物 | 10,873件・平均3,414円・最高220,000円 | 洗濯表示のタグが付いていることが多い |
| ウールの着物 | 1,302件・平均2,286円・最高99,660円 | ふっくらして、毛羽立ちが見える |
手元で確かめるなら、光にかざしたときの艶と、触ったときの吸いつき方を見ます。糸を抜いて燃やす方法が紹介されることもありますが、生地を傷めるので勧めません。素材が分からないまま出して大丈夫です。
名古屋帯と袋帯は、締める場面が違う
袋帯の参考買取価格は二十万円まで、丸帯は五万円まで。袋帯は礼装で締めるもので、名古屋帯は普段着から街着に使います。

落札の平均はどちらも六千円前後ですが、最高は袋帯が六十九万四千円、名古屋帯が四十四万円。平均だけ見て決めると、上の帯を見落とします。
| 種類 | 落札の実勢(120日) | 締める場面 |
|---|---|---|
| 袋帯(参考上限200,000円) | 56,936件・平均6,085円・最高694,000円 | 礼装。留袖や訪問着に合わせる |
| 名古屋帯 | 29,302件・平均6,061円・最高440,000円 | 普段着から街着まで |
| 丸帯(参考上限50,000円) | 1,618件・平均5,691円・最高181,000円 | 花嫁衣装や舞妓の装いに残る |
| 未使用の正絹の帯 | 6,010件・平均8,386円・最高550,000円 | 締めた跡がない状態 |
| 西陣織の袋帯 | 2,455件・平均13,263円・最高114,301円 | 京都市内で織られた礼装用 |
丸帯は今ほとんど作られていない形で、花嫁衣装や舞妓の装いに残る程度。幅の広い生地を二つ折りにして仕立ててあるので、ほどくと反物一枚分の生地が取れます。帯全般の話は帯の買取相場にまとめました。
作った人の名前が入った帯は、桁が変わる
京都府で八万三千円がついた名古屋帯は、浦野理一という作者の縦節紬でした。同じ名前で落札を調べると、百二十日で七十三件・平均五万四千円台・最高四十万四千円台です。
宇治市で四万三千円がついた仙頭刺繍の帯、京丹後市で二万八千円がついた誉田屋の袋帯も同じ考え方。作り手の名前が分かれば、市場の数字を突き合わせられます。
| 作者・工房 | 落札の実勢(120日) | 京都府の記録 |
|---|---|---|
| 浦野理一 | 73件・平均54,662円・最高404,250円 | 京都市 83,000円 |
| 誉田屋源兵衛 | 84件・平均26,832円・最高88,000円 | 京丹後市 28,000円 |
| 羽田登喜男 | 96件・平均22,638円・最高111,650円 | 宇治市(金額の記載なし) |
| 久保田一竹 辻が花 | 48件・平均48,953円・最高363,000円 | 京都市(金額の記載なし) |
| 道明の帯締め | 640件・平均7,051円・最高69,300円 | 京都市 23,000円 |
| 浦野理一 名古屋帯(参考買取価格) | 253,000円 | 京都市の記録の3倍 |
| 袋帯 金銀糸 相良刺 汕頭刺繍 | 57,000円(秋田県の記録) | 刺繍の帯 |
表の下二行は、京都府以外で公開されている数字です。同じ浦野理一の名古屋帯でも参考買取価格は二十五万三千円まで届いていて、京都市の八万三千円はその三分の一。同じ作者名でも、織りと状態で三倍ひらきます。

作者の名前は、帯なら端のほうに織り込まれていたり、たとう紙の外書きに書かれていたりします。読めなくても構いませんが、そこだけ写真に撮っておくと話が早くなります。作家物の着物の買取相場もあわせてどうぞ。
京友禅の訪問着は、絵の細かさで見られる
京友禅の参考買取価格は十五万円まで。加賀友禅の十八万円をわずかに下回ります。それ以外の友禅は二十万円までとされています。

落札で「京友禅 訪問着」を調べると、百二十日で百九十二件・平均一万六千円台・最高二十七万一千円。上と下の差が十七倍近く開きます。絵の細かさと作者の有無が、そのまま金額に出るためです。
| 種類 | 落札の実勢/参考買取価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 京友禅(参考買取価格) | 〜150,000円 | — |
| 加賀友禅(参考買取価格) | 〜180,000円 | 京友禅より上に置かれる |
| 記載外の友禅(参考買取価格) | 〜200,000円 | — |
| 京友禅の訪問着(落札) | 192件・平均16,355円・最安1,000円・最高271,000円 | 作者の有無で開く |
| 京鹿の子絞り(落札) | 4件・平均23,525円・最安14,850円・最高27,500円 | 件数が少なく参考程度 |
| 本加賀友禅 初代由水十久 訪問着 | 135,000円(参考買取価格) | 作家物の上限 |
| 手描友禅 秀水 スワトウ刺繍 | 20,000円(岡山県の記録) | 実際に買い取られた金額 |
京鹿の子絞りは、生地を糸でくくって染め分ける技法です。粒の細かさと数がそのまま手間なので、一枚に何万粒という品もあります。ただし出品そのものが少なく、市場の数字では測りきれません。友禅の細かい話は友禅の買取相場で扱っています。
丹後で織られた白生地は、染めてから値がつく
丹後ちりめんそのものの落札は、百二十日で八百九十五件・平均五千九百十七円です。最高でも十一万円で、京友禅の訪問着より一段下に見えます。
これは品質の差ではありません。丹後ちりめんは染める前の白生地として織られるもので、市場に出ている「丹後ちりめん」の多くは反物や小物のまま。染めと絵が乗って初めて、訪問着や振袖としての金額がつきます。
| 状態 | 落札の実勢(120日) | 金額の考え方 |
|---|---|---|
| 丹後ちりめん(反物・小物を含む) | 895件・平均5,917円・最高110,000円 | 白生地としての値 |
| 京友禅の訪問着(染めたあと) | 192件・平均16,355円・最高271,000円 | 染めと絵が乗った値 |
| 訪問着(全般) | 24,685件・平均6,268円・最高550,000円 | 作者と柄で開く |
| 反物 明綴れ 金糸 菱模様 | 180,000円(参考買取価格) | 仕立てていない状態 |
| 久保田一竹 落款 作家物 丹後ちりめんの訪問着 | 48,000円(大阪府の記録) | 丹後の生地に作家の染め |
たんすの奥から白い反物が出てくることがあります。仕立てないまま置かれていた品で、これも買取の対象です。参考買取価格を見ると、反物のままで十八万円という記録も公開されています。値がつかないと思って処分してしまうのが、いちばんもったいない扱い方になります。
京都市の隣の大阪府では、丹後ちりめんの生地に久保田一竹が落款を入れた訪問着が四万八千円で買い取られています。北で織った生地に市内で染めが乗ると、金額はこの帯に入るわけです。
訪問着と付け下げは、縫い目で見分ける
柄が縫い目をまたいでつながっていれば訪問着、縫い目で切れていれば付け下げです。参考買取価格は訪問着が三十万円まで、付け下げが八万円まで。
見た目が似ているので、家族が「たぶん訪問着」と言っていた一枚が付け下げだったということも起きます。広げて縫い目のところを見るだけで判別できます。
| 種類 | 落札の実勢(120日) | 参考買取価格 |
|---|---|---|
| 訪問着 | 24,685件・平均6,268円・最高550,000円 | 〜300,000円 |
| 付け下げ | 1,159件・平均5,480円・最高107,800円 | 〜80,000円 |
| 小紋(正絹) | 28,599件・平均3,564円・最高301,000円 | — |
| 色無地(正絹) | 8,828件・平均4,177円・最高143,000円 | — |
| 訪問着一式 落款 翠山工房 辻が花 | 13,000円(香川県の記録) | 実際に買い取られた金額 |
| 付け下げ 単衣 御衣ながしま | 23,000円(茨城県の記録) | 同上 |
| 小紋 単衣・袷(きしや/花織) | 17,000円/23,000円(長崎県・山形県) | 同上 |
表の下三行が、実際に買い取られた金額です。落札の平均は数千円ですが、買取の記録では一万三千円から二万三千円。参考価格の上限とのあいだに、この帯があると考えてください。単衣か袷かという仕立ての違いも、記録には必ず書かれています。

小紋は同じ柄が全体に繰り返される着物で、普段着や街着に使います。数は多く出ていますが平均は三千円台。ただし最高は三十万円を超えていて、作者物が混ざるとまったく別の数字です。戦前の派手な柄行きなど、年代の古い一枚は古い着物の買取相場のほうが近いはずです。訪問着の買取相場と付け下げ・小紋の買取相場で細かく整理しています。
留袖は格がいちばん上なのに、数字がついてこない
黒留袖は既婚女性の第一礼装で格はいちばん上ですが、落札の平均は三千円に届きません。参考買取価格の上限も七万円で、訪問着の四分の一以下です。
理由は着る場面の狭さ。親族の結婚式でしか使わないうえ、家紋が入っています。他人の家紋がついた着物は、そのままでは着られません。
| 種類 | 落札の実勢(120日) | 参考買取価格 |
|---|---|---|
| 黒留袖 | 7,626件・最安1円・最高110,000円 | 〜70,000円 |
| 色留袖 | 3,035件・平均3,414円・最高200,000円 | 〜70,000円 |
| 黒紋付 | 438件・平均6,790円・最高180,000円 | — |
ただし作者物や友禅の柄が入った留袖は、この枠から外れます。買取会社も、有名作家の作品や友禅柄なら高値が期待できると公表しています。低い枠に入るからといって、外して処分しないでください。留袖の買取相場に条件をまとめています。
振袖はセットのままだと数字が変わる
振袖の参考買取価格は十五万円まで。ただし襦袢や帯とセットで出すほうが有利です。買取会社も、一式での売却が金額アップにつながると公表しています。
成人式で一度だけ着て、そのまま二十年という一枚は珍しくありません。落札を見ると正絹の振袖が百二十日で一万二千二百四十二件・平均五千四百十八円で、最高は三十三万円でした。
| 状態 | 落札の実勢/参考買取価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 振袖(参考買取価格) | 〜150,000円 | 一式で有利 |
| 振袖 正絹(落札) | 12,242件・平均5,418円・最高330,000円 | 柄と寸法で開く |
| 帯揚げ・帯締めのまとめ(落札) | 315件・平均3,687円・最高37,000円 | 一式に添える小物 |
| 振袖 絞り 晴れ着 | 35,000円(島根県の記録) | 実際に買い取られた金額 |
| 振袖1式 帯・襦袢・帯締め・帯揚げ・ファー | 18,000円(宮城県の記録) | 一式での記録 |
| 振袖 城間栄順 本場琉球びんがた 襦袢セット | 230,000円(参考買取価格) | 作家物の上限 |
箱の中に、帯・帯揚げ・帯締め・半衿・草履が一緒に入っていることが多いはず。そのまま全部出してください。分けて出すと、一式としての価値が消えます。振袖の買取相場のほうもご覧ください。
紬と上布は、産地の名前がそのまま値段になる
大島紬の参考買取価格は三十万円までで、訪問着と並びます。結城紬は十五万円まで、いっぽう塩沢紬や伊那紬は二万円までと、産地で桁が変わります。
紬は先に糸を染めてから織る着物で、後から染める友禅とは作り方が逆です。手間のかかる産地ほど上に置かれ、名前がそのまま価格の目安です。
| 種類 | 参考買取価格の上限 | 産地 |
|---|---|---|
| 大島紬 | 〜300,000円 | 鹿児島県の奄美大島ほか |
| 芭蕉布・宮古上布 | 〜200,000円 | 沖縄県 |
| 黄八丈・八重山上布 | 〜180,000円 | 東京都の八丈島/沖縄県 |
| 結城紬・郡上紬 | 〜150,000円 | 茨城県と栃木県の境/岐阜県 |
| 久留米絣 | 〜130,000円 | 福岡県 |
| 越後上布・久米島紬・綾の手紬 | 〜100,000円 | 新潟県/沖縄県/宮崎県 |
| 紅花紬 | 〜60,000円 | 山形県 |
| 牛首紬 | 〜50,000円 | 石川県 |
| 上田紬・小千谷縮 | 〜30,000円 | 長野県/新潟県 |
| 塩沢紬・伊那紬 | 〜20,000円 | 新潟県/長野県 |
| 能登上布・近江上布 | 〜15,000円 | 石川県/滋賀県 |
落札で見ると、大島紬は百二十日で一万九千八百八十七件が動いて平均三千九百四十三円。結城紬は三千二百二十件で平均七千五百七十一円です。どちらも最高は百十九万円まで届いていて、平均との差が三百倍近く開きます。証紙のあるなしが混ざっているからです。

実際に買い取られた記録を見ると、証紙のついた本場大島紬は三重県で三万七千円、高知県で三万円。落札の平均より一桁上です。産地の証紙が付いていれば、それだけで別の帯に入ります。紬の買取相場に、証紙の見方まで書いています。
帯締めと帯揚げは、まとめて出すもの
京都市では、道明の有職組紐の帯締めが一本で二万三千円になりました。小物だから値がつかない、とは限りません。
ただし平均で見ると、道明の帯締めは百二十日で六百四十件・平均七千円台。まとめての帯揚げ帯締めは平均三千七百円ほどです。一本ずつ選り分けるより、引き出しごと出すほうが手間に合います。
| 品目 | 金額 | どこにしまってあるか |
|---|---|---|
| 道明の帯締め | 640件・平均7,051円/京都市 23,000円 | 帯と同じ引き出しの小箱 |
| 帯揚げ・帯締めのまとめ | 315件・平均3,687円・最高37,000円 | まとめて紙箱に入っている |
| 道中着 | 〜60,000円(参考) | たとう紙に着物と一緒 |
半衿、草履、バッグ、帯留めも同じ引き出しに入っているはずです。着物の付属として一緒に見てもらえます。詳しくは和装小物の買取相場にまとめました。
たんす一棹をまとめて出すと、どうなるか
「着物 まとめて 大量」で落札を調べると、百二十日で千七百三十二件・平均一万三千円台です。枚数がいくつでも、まとめて出せば一括の値です。
ここが、自分で売る場合の限界です。三十枚を一括にすれば一万円台、一枚ずつ出せば手間が三十倍。買取なら一枚ずつ確かめたうえで、合計を一度に出してもらえます。
| 出し方 | 落札の実勢(120日) | 手間 |
|---|---|---|
| 着物をまとめて大量に出品 | 1,732件・平均13,091円・最高88,000円 | 1回で済む |
| 訪問着を1枚ずつ出品 | 24,685件・平均6,268円・最高550,000円 | 枚数ぶん撮影と発送 |
| たとう紙ごと数枚を出品 | 24件・平均2,374円・最高7,250円 | ほとんど動かない |
ここまでで十一の区分を並べました。共通しているのは、帯と小物が意外に強く、格の高さと金額が一致しないという点です。名前が分からなくても数字は出るので、選り分けずにたんすごと見てもらうのが早道です。
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北で織り、市内で染める。京都の着物が二つの土地でできる話
京都の着物は、市内だけで完結しません。府の北にある丹後で白生地を織り、市内で染めます。だから買取の記録も、京都市と京丹後市の両方に出ています。
この作り方を知っておくと、たんすの中の一枚がどこで生まれたものかが見えてきます。証紙の読み方にもつながる話です。
丹後の技術は、三百年前に西陣から持ち帰られた
丹後ちりめんが独特のシボを持つようになったのは享保五年、一七二〇年のことです。丹後の峰山に住んでいた絹屋佐平治が、京都の西陣へ奉公に入って技法を学び、持ち帰りました。
当時の丹後の織物は「田舎絹」と呼ばれ、売れ行きが落ちていました。凶作も重なって暮らしが立たなくなり、その打開策として西陣へ行った人たちがいたと、産地の組合が公表しています。
持ち帰った技術は惜しみなく周りへ教えられ、丹後一円に広がりました。丹後はもともと千三百年以上前から絹織物の産地で、戦前には日本一の絹織物の産地に。今も全国の約七割を占めています。
京友禅は分業が前提。一人で仕上げる作家は例外
京友禅は、下絵・糊置き・彩色・蒸しといった工程を、それぞれの職人が分けて受け持ちます。まとめ役の染匠が全体を組み立てる形が基本です。
元禄年間、京都の祇園あたりに住んでいた扇絵師の宮崎友禅斎が、華やかな絵を描く手法を加えて手描友禅として確立したと伝えられています。明治には化学染料が入り、広瀬治助が型紙を使う型友禅を生み出しました。
宇治市で買い取られた帯の作者、羽田登喜男はこの分業の外にいた人です。一九一一年に金沢で生まれ、十代で加賀友禅を、二十歳で京都に出て京友禅を学びました。両方を身につけたうえで全工程を自分で行い、一九八八年に重要無形文化財の保持者に認定されています。
産地の名前は、証紙の一枚に残っている
丹後ちりめんは、検査を通った製品にブランドマークが押されます。紬や上布も同じで、金額を分けるのは産地の組合が出す証紙の有無。大島紬・結城紬・牛首紬・琉球紅型といった有名産地では、とくに証紙が重要だと買取会社も公表しています。
証紙は小さな紙片で、たとう紙の中に一緒に入っていたり、着物の裏に縫い付けられていたりします。仕立てるときに外して封筒にまとめてある家も多いはず。
北で織り、市内で染め、証紙で保証する。京都の着物はこの三段でできています。たんすを開けたら、着物と一緒に紙も探してみてください。
三十万円で誂えた留袖に、次はいくら払われるか
買ったときの値段と、次の人が払う値段はまったく別の数字です。両方を混ぜて考えると、提示された金額に必ず落胆します。
京都府には、その差がはっきり出る相談の記録が残っています。金額つきなので、そのまま比べられます。
京都府に残る、三時間の勧誘で三十万円という相談
新聞広告の着物ファッションショーに応募したところ、当日に三時間近く勧誘され、留袖と袋帯などを三十万円で契約したという相談が京都府に寄せられています。娘さんと二人で応募した人の話です。
この件は、販売の目的を隠して人を集めた形だという判断でクーリング・オフの通知を出す助言が行われ、業者が応じて解約できました。府の窓口が公開している事例です。
ここで注目したいのは金額です。留袖と袋帯などを合わせて三十万円。これが誂えた側の値段です。
誂えた値段と、次の人が払う値段は別のもの
同じ組み合わせを中古の市場で見ると、黒留袖は数千円、袋帯の平均も六千円台です。合わせて一万円前後という水準です。
三十万円が一万円になるのは、その着物が粗悪だからではありません。誂えの値段には反物の代金だけでなく、仕立て代、寸法合わせ、店の販売にかかる費用が全部乗っています。次に買う人は、そのどれも負担しません。
| 基準 | 金額 | 何が含まれるか |
|---|---|---|
| 誂えたときの支払い | 留袖と袋帯などで300,000円 | 反物・仕立て・寸法合わせ・販売の費用 |
| 中古市場での落札 | 黒留袖は数千円、袋帯は平均6,085円 | 品物そのものの評価 |
| 買取の参考価格の上限 | 黒留袖〜70,000円、袋帯〜200,000円 | 作者物・友禅柄など上位の条件つき |
作者物や友禅柄なら参考価格の上限は跳ね上がりますが、それでも誂えた金額には届きません。着物に限った話ではなく、仕立てて使う品はどれもこうなります。
だから「損をした」ではなく「いくら戻るか」で考える
買った金額を基準にすると、どこへ出しても納得できません。比べる相手は、置いておいた場合の金額つまりゼロにするべきです。
たんすに置いても金額は増えません。むしろ絹は年ごとにやせ、湿気を吸い、黄ばみが出ます。ゼロと比べるなら、数千円でも前進です。
そのうえで、上の枠に入る一枚が混ざっていないかを確かめる。誂え値と中古値の差を理解したうえで、たんすの中から高い一枚を拾い上げる。この順番なら気持ちも整理できます。
呉服の街に、着物を買い取る店は何軒あるか
京都には呉服にかかわる店が数多くありますが、その多くは着物を売る側の商売です。買い取る店は別で、数もぐっと絞られます。
持ち込みで調べる人が三百三十件いる以上、ここは正面から整理しておく必要があります。向く場合と向かない場合を分けます。
売る店と買う店は、同じ業態ではない
反物や仕立て上がりを売る呉服の店は、中古を買い取る仕事をしていないことがほとんどです。新しい品を並べる商売なので、扱う市場が違います。
古い着物を並べている店もありますが、こちらは委託で預かる形が多くなります。預けて売れたら手数料を引いて受け取る仕組みなので、その場では現金になりません。
その場で金額が出るのは買取を専門にする業態です。訪問して買い取る会社は数多くありますが、この記事で着物の相談先として挙げているのは福ちゃんです。選んだ根拠はこちらに書きました。
持ち込みが向くのは、一枚か二枚で名前が分かるとき
作者の名前が分かっている一枚を、その日のうちに現金にしたい。一枚か二枚でそこまで分かっているなら、運んだほうが早いでしょう。点数が少なければ荷物にもなりません。
市内へ出る用事があるなら、そのついでという使い方もできます。帯締めや半衿だけといった小物なら、なおさら手軽です。
向かないのはこの裏返しです。枚数が多い、名前が分からない、帯と小物が混ざっている。どれかに当てはまるなら、店の前で荷物を広げる作業が待っています。
たとう紙を抱えて四条まで出るか、家で広げるか
着物はたとう紙に包んだ状態で運ぶので、枚数のわりにかさばります。紙が折れると中の絹にも折り目が移ります。
市バスも電車も、観光の時期は特に混みます。両手でたとう紙の束を抱えたまま立っていると、角がつぶれる。手放す前に自分で状態を落としてしまう、いちばん惜しい展開です。
しかも一軒で終わらないこともあります。帯に強い店と紬に強い店が別なら、同じ荷物で二軒。移動と待ち時間で、半日はつぶれる計算です。
宇治から京丹後まで。府内は南北に長い
京都府の面積は四千六百十二平方キロメートルで、二十六の市町村が南北に細長く並んでいます。丹波の山地を挟んで、気候まで日本海側と内陸側に分かれます。
買取の記録も、京都市・宇治市・京丹後市に散っていました。府の北側から市内の店まで着物を運ぶとなると、日帰りの荷物としてはかなり重い部類です。
一枚か二枚で名前が分かるなら持ち込み、たんすごとなら家で広げてもらう。この線引きさえ決めておけば、たとう紙を抱えて往復せずに済みます。
たとう紙を開けるのは、いつがいいか
着物には日々の相場がありません。動かしているのは、着る場面がいつ来るかという需要です。結論としては、思い立ったときが早いほど有利です。
それでも季節の波はあります。三つに分けて確かめます。
式の季節の手前に、需要がひとつ増える
着物が実際に着られるのは、卒業式と入学式のある春、七五三と結婚式の多い秋です。買う側はその手前に動くので、需要はひと足早く立ちます。
成人式の振袖なら、年が明けるずっと前に用意が始まります。年末年始も着る場面が増える時期で、その手前の秋にも動きが出るころ。売るなら、着る季節の一歩手前を狙うと探している人が増えます。
ただし数か月待つほどの差ではありません。半年寝かせて損をするくらいなら、思い立った週に動くほうが確かです。
公式ページに置かれた、売り時という言葉の中身
買取会社は京都府のページに、今後は需要の減少が予想されるので今が売り時だと書いています。売る側の言葉ではありますが、根拠ははっきりしています。
着物を日常的に着る人は減り続けています。買い手の総数が減れば、同じ一枚に手を挙げる人も減る。市場が細るという方向は、当面変わりそうにありません。
逆に言えば、今の水準は今しか出ないということ。金や地金のように「相場が上がるまで待つ」という考え方は、着物では成り立ちません。
絹は毎年やせる。置いた年数だけ戻らない
相場が横ばいでも、生地そのものが古びるぶんだけ手取りは減ります。絹はたんぱく質の繊維なので、湿気と光で少しずつ傷みます。
とくに怖いのが、たたみ皺のところに出る筋と、胴裏の黄ばみ。裏地が変色すると表がきれいでも直しの費用が乗ります。買う側はそれを見込んで金額を下げます。
季節を待つ、相場を待つ、心の整理を待つ。どれも数年になると、待った理由より生地の劣化のほうが大きくなります。動くと決めたら、その季節のうちに終わらせるのが得策です。
洗いに出してから、では遅い
しみを抜いてから売ろうとすると、たいてい費用のほうが上回ります。着物のしみ抜きは職人の手作業で、一か所でも数千円から。
証紙や落款にも手を入れないでください。手を加えないことが、そのまま金額を守ります。
しみ抜きの代金は、戻ってくる金額を超える
黒留袖の落札が数千円という水準に対して、丸洗いとしみ抜きを頼めば同じくらいの費用が出ていきます。差し引きすると手元に何も残りません。
しかも、しみを抜いたからといって買取の金額がその分上がるとは限りません。買う側も自社で手入れをするので、費用を二重に払ったことになります。
汚れがあるまま出して大丈夫です。しみのある一枚は下がりますが、それでも洗ってから出すより手取りは大きくなります。
買取会社も、色褪せや虫食いのある着物、作家物ではない着物、流行りではないデザイン、丈の短い着物を「こんなお悩み」として挙げ、まず相談してほしいと書いています。他店で断られた一枚でも買い取れる場合があるとも。ただし「状態によってはお断りする場合もございます」とも明記されているので、そこは正直に受け取っておいてください。
証紙と落款は、はさみを入れずに添える
証紙は産地と品質を示す紙で、これが付いているかどうかで金額が変わります。切り離したり捨てたりすると、証明する手段が消えます。
落款は作者の印で、縫い目の内側や裾のあたりに入っています。糸をほどいて確かめようとすると、仕立てを傷めます。そのまま見せてください。
もうひとつ、白い糸が縫い目に沿って粗くかがってある一枚を見つけたら、それも切らないでください。しつけ糸といって、仕立てたあと一度も袖を通していない証明です。買取会社も「しつけ糸がついた状態の着物は未着用の証明になりますので、取らないようにしてください」と明記しています。
買取会社も、着物の査定では素材と落款、丈の長さ、しみや汚れの状態を確認すると公表しています。見る側は最初からそこを見に来るので、こちらで準備する必要はありません。
風を通すだけで足りる。たとう紙は開けない
保管でできることは、湿気を抜くことだけです。買取会社の案内でも、年に一度か二度、直射日光を避けて干すこととされています。たとう紙に包んだまま、晴れた日に引き出しを開けて空気を入れ替えれば十分。
防虫剤を足すなら、種類を混ぜないでください。成分の違うものを一緒に入れると溶けて生地に染みることがあります。金糸銀糸に直接触れさせるのも避けたほうが無難です。
入れ物についても案内があります。桐のたんすや衣裳箱は、防虫と除湿の両方に向いているという理由から勧められています。実家に桐のたんすがあるなら、売ると決めるまではそこに置いておくのが安全です。
洗わない、切らない、混ぜない。この三つを守るだけで、たんすの中身は今の状態のまま数字がつきます。
一枚ずつ撮って出品する道が、着物では細い理由
自分で出品すると、寸法の計測と状態の説明がすべて出品する側に回ります。着物はここが重く、一枚あたりの手間が他の品と比べものになりません。
そのうえ発送でも問題が起きます。三つに分けて見ておきます。
採寸と状態の説明が、全部こちらに回ってくる
着物の出品では、身丈・裄・袖丈・前幅・後幅といった寸法を測って書くのが前提です。買う側は自分に合うかどうかで選ぶので、ここを省くと売れません。
しみや汚れの位置も、写真を撮って一つずつ説明する必要があります。見落とした一か所で評価が下がり、返品の話になることもあります。
作者物なら真贋の説明も加わります。落款の写真を出しても、買う側が納得するかは別の話です。
絹は送るときに折り目がつく
着物を箱に収めると、たたんだ線のところに新しい折り目が入ります。絹は一度ついた筋が消えにくく、届いた時点で状態が落ちます。
たとう紙ごと送るとかさが増え、送料も上がります。帯は一本でも重量があるので、複数まとめるとさらに増えます。
手数料と送料を引いたあとの金額を、枚数分の作業時間で割ってみてください。一時間あたりの手取りが見えると、判断がつきます。
売れ残った一枚は、たんすに戻るだけ
出品しても、買い手がつかなければ片づきません。まとめて出品すれば早いのですが、その場合の落札は平均一万三千円台に沈みます。
三十枚を一括で一万円台にするか、一枚ずつ三十回の作業をするか。どちらも実家の片づけを終わらせる手段としては重すぎます。
寸法の説明、折り目、売れ残り。こうした事情が重なるので、着物は自分で売る道が細くなります。一度に見てもらうほうが、片づけとしては早く終わります。
母のたんすに手をかける前の、家族の話
母の着物であっても、名義の上では相続する人みんなの持ち物です。片づけの勢いで一人が処分すると、あとで必ず引っかかります。
税の話は、家庭で使っていた着物ならまず出てきません。順に確かめておきます。
誰が受け取るかを、たとう紙を開ける前に話す
法律上、遺品は相続人の共有物です。だから一人の判断で手放すと、後から蒸し返されます。金額が出てから揉めるより、先に一言そろえておくほうが早く進みます。
しかも着物には、誰かが着るかもしれないという気持ちが残ります。姪や孫へ譲る案が出るなら、その分も含めて先に決めておくと迷いません。
先に金額を知ってから家族へ持ちかける、という順番も選べます。数字が出るところまでなら、費用は発生しないからです。
家で使っていた着物に、税の話はまず出ない
日常に使っていた品を売って得たお金には、原則として税がかかりません。例外になるのは、一点か一組で三十万円を超える貴金属・宝石・書画骨董だけ。
仮にそこへ当たっても、譲渡所得には年五十万円の特別控除が用意されています。着物を数万円で手放す程度なら、そもそも届きません。
支払調書が税務署へ回るのは、一度の売却が二百万円を超えたときです。作家物がまとめて出てきた場合にだけ、思い出せば十分でしょう。
名前を書いた紙が出てきたら、捨てない
たとう紙の外側に書かれた品名や、一緒に入っていた証書は、そのまま添えてください。誰の作か、どこで誂えたかが分かる手がかりです。
買った当時の領収書やカタログが残っていれば、それも取っておきましょう。仮に税の計算が要る金額になった場合、いくらで手に入れたかを示す紙が役に立ちます。
加えて、身分証も用意しておいてください。古物営業法により、買い取る側には相手の身元を確認する義務があります。同意をとる、紙をそろえる、身分証を出す。ここまでやれば当日は滞りません。
たんすの前に座ったまま、一枚ずつ数字を聞く
畳の上に広げたまま金額が出るのが、来てもらう買取です。たとう紙を一枚も持ち上げずに済みます。来てもらう料金も、広げてもらう料金も、断ったときの料金もゼロ。
気がかりなのは、家に上がられたあとで断りづらくならないか、という点でしょう。ここは制度としても守られているので、順に見ておきます。
呼んだこと自体に、お金はかかりません
出張料も、見てもらう料金も、見送ったときの料金も、振込の手数料もかかりません。数字を聞き終えるまで、財布を出す場面がありません。
窓口は電話とWebのフォームの二つ。「たんす一棹と、帯が十本ほど」で通じます。中身が何かを前もって調べる必要はありません。
広げる場所だけ用意しておくとうまく進みます。畳の間か、テーブルを寄せたリビングがあれば十分です。
一枚だけ手元に残すという決め方もできる
提示に納得がいかなければ、その場で全部見送って差し支えありません。断っても料金は発生しませんし、一括で手放す義務もありません。
母が好きだった訪問着だけ残して、あとは出すという分け方もできます。帯は手放して着物は置いておく、という決め方でも問題ありません。
法律では、声をかける前に会社名と、買い取りに来たこと、扱う品目を告げるよう義務づけられています。契約する気がないと伝えた相手に話を続けることも認められていません。
書面が手元に来てから八日、たんすに戻していい
家に来て買い取る取引には、後戻りの制度が付いています。クーリング・オフといって、書面を受け取った日を一日目に八日間、理由を言わずに解除できる決まり。その八日のあいだは、着物を渡すこと自体を断れます。
この決まりが及ばないのは、二輪以外の自動車、家具、大型家電、本やCD・DVD・ゲームソフト、有価証券。着物と帯は、その一覧のどこにも出てきません。つまり八日ぶんの猶予が丸ごと使えます。
当日に結論を出せなくても、逃げ道が用意されているわけです。書面を受け取り、たとう紙は自宅に置いたまま考える。そういう進め方が制度として認められています。困ったときは、消費者ホットラインの番号にかければ最寄りの窓口につながります。
喪服とウールは宅配で送れないという制約がある
着物と帯は宅配買取の対象ですが、喪服とウールの着物だけは対象から外れています。買取会社が対象品の一覧に明記している内容です。
たんすを開けると、喪服が一枚は入っているものです。そこだけ抜いて別に考えるより、まとめて見てもらったほうが早く終わります。
費用がかからず、一枚ずつ選べて、八日間は渡さずにおける。ここまで分かっていれば、来てもらうことへのためらいはかなり小さくなります。仕組みそのものは出張買取の解説にまとめています。
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京都市は即日訪問の対象。福ちゃんは丹後まで来る
福ちゃんは京都府のほぼ全域を訪問の対象にしていて、主要なエリアなら最短で即日の対応も可能だと公表しています。利用した人の感想は福ちゃんの評判記事のほうで扱っています。
ここまで挙げた京都府の六件は、すべて同じ会社が自社サイトに載せている記録です。数字の出どころと頼む先がそろっていると、あとで照らし合わせが利きます。
生地を織った丹後の市も、訪問の対象に入る
公表されている対象エリアには、京都市内の全区に加えて京丹後市・宮津市・舞鶴市・福知山市が並んでいます。与謝野町や伊根町といった丹後の町村も入っています。
実際、京丹後市で袋帯が二万八千円という記録が残っていました。白生地を織ってきた土地から、そのまま買い取られているということです。
南は宇治市・城陽市・木津川市、西は亀岡市や南丹市まで。府内のどこにたんすがあっても、運ぶ話にはなりません。
京友禅と京小紋を名指しで挙げている
京都府のページには「京友禅・京小紋をはじめとしたさまざまな種類の美しい伝統着物」という書き方があり、親から受け継いだ伝統着物の買取に触れています。色無地や訪問着まで扱うとも書かれています。
参考買取価格の一覧にも京友禅が十五万円までとして載っています。産地や技法の名前が価格表に並んでいるかどうかは、その分野を日常的に扱っている証拠です。
紬や上布も、大島・結城・黄八丈・宮古上布と細かく分かれて載っています。名前で引ける形になっているので、証紙を見せれば話が早く進みます。
帯締め一本から、毛皮の襟巻きまで同じ日に
一点からでも訪問すると公表しています。かかる手数料もすべて無料と明記。帯締め一本でも呼べます。
扱う品目は十九に分かれていて、着物はそのひとつ。同じ引き出しの奥から出てきた毛皮の襟巻きや、床の間の掛軸も同じ日に見てもらえます。毛皮のほうは毛皮の買取相場と高級毛皮の買取相場で扱っています。
一日に一種類ずつ片づけていては、実家はいつまでも終わりません。たんす一棹をきっかけに、家じゅうまとめて数字を出してもらう。そのほうが結局は早く済みます。
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呼ぶ相手を、頼む前に絞り込む
どこに声をかけるかは、依頼の前に公式ページで判断できます。許可番号、実例に作家名が出るか、そして売りつける訪問と混同していないかの三つです。
着物は作者と産地で桁が変わる品なので、扱い慣れているかどうかで金額が変わります。この三つを見るだけで、候補はかなり絞れます。
公安委員会の番号を、まず画面で探す
中古の品を買い取るには、公安委員会が出す古物商の許可が必要です。その番号をページに出しているかが、最初の判断材料です。
会社の所在地と代表者名、問い合わせ先が書いてあるかも見ておきます。家に上がってもらう取引では、身元がはっきりしているかどうかが安心の土台です。
郵便受けに入っていた紙だけで、会社の情報が見つからない相手は候補から外してください。扉を開ける前に済ませられる確認です。
実例に作家の名前が出てくるかどうか
会社のページに並ぶ実例に、品名と作者名と金額まで入っているかを見てください。「高価買取します」としか書いていない会社との差は、そこに出ます。
この記事で使った京都府の記録には、浦野理一・誉田屋・仙頭刺繍・道明・羽田登喜男・久保田一竹という名前が並んでいました。読める形で並んでいれば、その分野を日常的に扱っている証拠です。
あわせて、何でも扱う総合リユース店で着物の金額が伸びにくい理由も知っておくと判断が楽です。売り先が国内の自店の棚に限られるぶん、売値の上限から逆算した数字になるのです。扱う品目が広いので、落款や証紙の一枚まで追う体制にはなりません。同じ着物でも店ごとに基準が変わるのは、業態の違いから来ています。
買取会社の側もこの点をはっきり書いています。着物に詳しくないと有名作家の作品と気づかないまま安く手放してしまうことがあるので、落款や証紙のある着物はどのような状態でも着物の買取店へ、という案内です。たんすから出てきた一枚に印や紙が付いていたら、そこが分かれ目です。
売りつける訪問と、買い取る訪問は別の話
着物をめぐる相談には、売りつけられた話と買い叩かれた話の二種類があります。京都府に残っているのは前者で、三時間の勧誘で三十万円という事例でした。
買い取ってもらう側で気をつけるのは、今日中に決めてほしいと迫られる場面です。他社に見せる必要はないと言われたら、そこで打ち切って構いません。
着物は帯に強い会社と紬に強い会社が別ということも起きます。だから同じたんすを二社に見てもらう価値が出てくるわけです。日を分けて二回呼ぶという頼み方もできます。「もう一社にも見てもらう予定です」と伝えて差し支えありません。あわせて、値がつかなかった一枚を引き取ってもらえるかも申し込みの電話で確かめておくと、当日に迷いません。
受話器を取ってから、たんすに隙間ができるまで
声をかけてから受け取りまで、実際に動く時間は合計で一時間ほど。主要なエリアなら、その日のうちに来てもらえることもあります。
こちらで用意するものもほとんどありません。四つの段階に分けて追います。
一 枚数とたんすの棹数を伝える
連絡そのものは三分あれば終わります。電話の受付は朝八時から夜八時まで。Webのフォームは時間を問いません。
伝えるのは「桐のたんすが一棹と、帯が十本ほど」という程度で足ります。中身の種類を数える手間も、写真を撮る手間もかかりません。
床の間の掛軸や、引き出しの奥の毛皮もありそうなら、そこで一緒に伝えておくと無駄がありません。
二 訪問の日を決める。畳の間を空けておく
主要エリアなら朝に連絡してその日のうち、という進み方もあります。急がないのであれば、来週や来月を指定しても差し支えありません。
当日までにやっておくのは、着物を広げられる場所を空けておくことだけ。畳の間があれば理想的ですが、テーブルを寄せた床でも進みます。
実家が丹後や山あいで道が分かりにくいなら、この段階で目印を伝えておくと当日が早く進みます。身分証の用意も済ませておけます。
三 一枚ずつ広げ、落款と証紙を確かめる
枚数にもよりますが、広げてもらう時間は四十分前後を見ておけば足ります。たとう紙を開けて一枚ずつ広げ、素材・落款・丈・しみの有無を確かめながら進みます。
気になったことは、その場で質問してください。この一枚はなぜ高いのか、この山はなぜ数千円なのか。説明できる相手かどうかは、ここで見えてきます。
残すと決めている一枚は、そもそも出さなくて大丈夫です。母の形見として一枚だけ手元に置く。そういう選び方もあります。
四 金額を聞き、渡す一枚と戻す一枚を分ける
数字を聞いたあとで判断すれば十分です。断っても請求書は届きません。支払いは現金でも振込でも選べます。
手放すと決めたら書面を受け取ります。そこから八日のあいだなら、契約の取り消しも、引き渡しの拒否も通ります。
三分の連絡、四十分前後の作業、数分の受け取り。ここに移動も順番待ちも入りません。引き出しがひとつ軽くなるまでが、以上の四段階です。
たとう紙の紐を結び直す。その手前で残る疑問
手順そのものは見えたはずです。残っているのは、もっと手前の小さな引っかかり。たんす一棹でいくらになるのかという逆引きから、府の北に住んでいる場合まで拾っていきます。
- たんす一棹だと、だいたいいくらになりますか?
-
入っているものしだいですが、数千円から十万円台までが実際に出ている範囲です。
まとめて一括で出品した場合の落札は平均一万三千円台。いっぽう作者物の帯が一本混ざっていれば、それだけで八万三千円という記録があります。枚数より、何が入っているかで決まります。
- しみのある着物でも見てもらえますか?
-
はい、そのままで大丈夫です。洗ってから出す必要はありません。
しみ抜きは職人の手作業なので、費用が戻ってくる金額を超えてしまいます。汚れがあるまま出したほうが、手取りは大きくなります。
- 喪服は箱に詰めて送れますか?
-
いいえ、喪服とウールの着物は宅配買取の対象外です。
着物と帯そのものは送れますが、この二つだけ外れています。たんすに喪服が入っているなら、来てもらう形にそろえたほうが一度で終わります。
- 寸法が小さい着物でも値はつきますか?
-
つきますが、身丈と裄が短いと下がりやすくなります。
買取会社は、丈の長い着物のほうが高くなる理由を二つ挙げています。体型を選ばず着られることと、生地が多いぶん仕立て直しがしやすいことです。逆に帯は丈と幅がほぼ決まっているので、この問題が起きません。京都府の記録が帯に偏っているのも同じ理由でしょう。
- 仕立てていない反物のままでも売れますか?
-
はい、反物のままでも買取の対象になります。
丹後ちりめんの白生地も、染め上がった反物も同じです。仕立てていないぶん寸法の制約がないので、たんすの奥から出てきたら一緒に出してください。
- 証紙が見当たりません。それでも大丈夫でしょうか
-
大丈夫です。証紙がなくても査定は受けられます。
ただし産地を証明する紙があると、その手間が省けるぶんが金額に反映されます。たとう紙の中や、別の引き出しの封筒に入っていることが多いので、探してみる価値はあります。
- 来てもらったあと、断りにくくなりませんか?
-
いいえ、提示された金額に納得がいかなければ、そのまま持ち帰ってもらえます。
手放す品は一枚ずつ選べますし、契約書面を受け取った日から八日間は品物を渡すこと自体を拒めます。着物と帯は、この八日間の対象から外れていません。
- 実家が京丹後市ですが、来てもらえますか?
-
はい、京丹後市も公表されている対象エリアに入っています。
宮津市・舞鶴市・福知山市、与謝野町や伊根町も同じです。実際、京丹後市で袋帯が二万八千円で買い取られた記録が公開されています。
- 帯だけ、あるいは小物だけでもお願いできますか?
-
はい、たった一点でも伺うと公式に書かれています。
京都市では帯締め一本で二万三千円という記録もあります。せっかく来てもらうなら、引き出しの他の中身も出しておくと無駄がありません。
- 値がつかなかった着物は、引き取ってもらえますか?
-
会社によって対応が分かれるので、申し込みの電話で確かめてください。
無料で引き取る会社もあれば、そのまま置いていく会社もあります。たんす一棹ぶんの着物が残ると片づけが止まるので、この一問は先に済ませておきましょう。
- 桐のたんすそのものは買い取ってもらえますか?
-
着物を扱う会社では、たんす本体まで引き取らないことが多くなります。
中身を先に片づけてしまえば、本体は自治体の大型ごみとして出せます。京都市は大きさで手数料が変わる仕組みなので、測ってから申し込んでください。
こまかい引っかかりが取れたら、残るのは日取りだけ。最後に、この記事で出てきた数字と決まりごとを並べ直しておきます。
京都の着物について、数字と決まりごとを並べ直す
出てきた材料を、手を動かす順に組み直しました。証紙と落款を探す、洗わずに広げる、誰が受け取るかを決める、日を選ぶ。この順でたどれば途中で止まりません。
- 京都府の記録は6件中4件が帯。名古屋帯83,000円・刺繍の帯43,000円・袋帯28,000円
- 帯は寸法直しが要らないぶん買い手が広い。着物は身丈と裄で下がる
- 格の順と金額の順は一致しない。黒留袖は落札で数千円、袋帯の参考上限は200,000円
- 京友禅の参考上限は150,000円。訪問着と大島紬は300,000円まで
- 柄が縫い目をまたげば訪問着、切れていれば付け下げ。広げるだけで分かる
- 丹後ちりめんは1720年に西陣の技術から始まった。今も全国の約7割
- 京友禅は分業。全工程を一人で仕上げる作家は例外
- 誂え30万円と中古1万円前後は別の基準。比べる相手は置いておいた場合のゼロ
- しみ抜きは費用倒れ。汚れたまま出したほうが手取りが残る
- 証紙と落款にはさみを入れない。防虫剤は種類を混ぜない
- まとめ出品の落札は平均13,091円。1枚ずつなら枚数ぶんの採寸と発送
- 喪服とウールは宅配買取の対象外。たんすごとなら来てもらう形が早い
- 京丹後市・宮津市・与謝野町まで訪問の対象。主要エリアは最短即日
- 書面が届いた日から8日間は渡さずにおける。着物も帯も除外の並びにない
残る作業は、たんすを開ける日を選ぶことだけ。棹の数と帯の本数さえ言えれば、最初の電話は三分もかかりません。
袖を通さなくなった一枚を、着る人のもとへ
着物は、たんすに入れておくだけでは何も起きません。むしろ絹は年ごとにやせ、裏地から黄ばみが出ます。
作者を知らないまま眠っている一枚がある
母が何を持っていたのか、家族が知らないまま出てくるほうが多いくらいです。宇治市の一本は、人間国宝に認定された人の帯でした。
反対に、いちばん大事にしまってあった一枚が数千円で終わることもあります。たとう紙を開けてみるまで、答えは出ないということです。
たんすの中で黄ばむより、次の人の肩へ
金額を出してもらうところまでは、費用が一切かかりません。売ると決めきる前の段階でも呼べます。数字を見てから気が変わったとしても、遅すぎるということはありません。
着物は、誰かが袖を通したときに生き返ります。たんすの奥で他の一枚と重なったままでいるより、次に肩を通す人の手に渡ったほうが、着物にとっても幸せでしょう。
名前の読めない落款が入った訪問着も、母の帯締めも、広げてもらうまで金額は出ません。福ちゃんは京都府のほぼ全域を訪問の対象にしていて、白生地を織ってきた丹後の市まで含まれています。金額だけ先に知って、判断は後日に回しても構いません。
お母さんが選んだ一枚に、きちんとした行き先が見つかりますように。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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たとう紙に入れたまま、たんすの中身をまとめて見てもらえます。
出張料・査定料・キャンセル料は0円。
証紙が見つからなくても、シミや色褪せがあっても査定できる場合があります。
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